成功する起業家が持っている24の資質・07『判断力』

ニュースレターでお送りしている「成功する起業家が持っている24の資質」の7番目の資質、『判断力』についてお送りいたします。

今回、こちらに書かせていただく24の資質は、私自身が38年の起業家として観てきた企業のトップや成功したクライアント達、そして、2012年から個人コンサルテーションをさせていただいた330名あまりのクライアントを観て分析したり、自分自身で経験したことからまとめた内容です。

あなたのマインドセットにお役に立てたら幸いです。

『判断力』 とは

『判断力』 とは・・・
業界での常識や他人の思惑などにまどわされることなく、自身の観察力や分析力、そして直感力からくる最終決断のことです。

最終判断を下す前に、現在の状況についての事実をしっかりと理解するように努め、目の前の物事を虚心や偏見なしに評価し、自分の今までの価値観や状況を変えても良いという考えを持てるかどうかです。

成功する為には、この『判断力』をいかに使って行けるか。

それには事態をありのままに観る目が必要です・・・!

今日のお話の経営者M氏に初めてお会いしたのは1997年。
私よりも8才ほど年上で、当時脂の乗り切った40代後半のころでした。

当時、M氏はイタリアンレストランチェーンを創業して10年目。年商15億・社員数180名

都内周辺の住宅街や駅前に、15店舗の直営店を経営していらっしゃる創業社長でした。

インテリア設計のデザイン会社の社長からのご紹介で、店舗の新しい業態を模索中とのこと。

何社かの候補の中、ブランディングができる人がご希望ということで、幸運にもお付き合いが始まりました。

地元密着型の独自性を生かしたイタリアンレストランチェーンの成長

新しい業態の店舗のブランディングも順調に進み、1997年〜1998年にかけてこの業態でのお店を1年で3店舗ほど出店した後、M社長に呼ばれました。

「髙橋さん。カン◯◯おばさんのパ◯タ小屋(新業態の店名)も順調に売り上げが伸びているので、本体の方の、タ◯◯&タ◯◯の方もなんとかしてね。
チーフ・マネージャーのYに話してあるから細かいことはYとつめてって」
と言われました。

ちょうど1998年に入り、2000年に向けての消費が上向きに転じ始めたころ、M氏のチェーン店も18店舗から拡大路線に舵をきり、1年間に3店舗の出店計画をスタートした時です。

創業から10年で15店舗を展開というペース。

そういう意味では、M社長にとって1998年は大きな飛躍へと突入した年でした。

お店のコンセプトはM氏の読み通り、20代〜30代前半の女性をターゲットとして、店のインテリアは丸木を使った手作り感あふれる感じにし、雑貨に到るまで、若い女性好みの物を揃えました。

何よりパスタを中心とした料理のお皿にイタリア地方の絵付きの可愛い陶器の大皿を使用し、お料理の量は他店よりも盛りだくさん。

お料理やワインのメニューも多く、リーズナブルな価格で、高級店ではないけれど、お腹いっぱい美味しい物を食べれる店としても、パスタブームを作った名店としても、業界では評価を受けていました。

M社長は店創りのコンセプトをこう言っていました。

「手作り感を大事にしたいんだ。
イタリアのちょっとしたレストランでも、手書きのメニューで、色々なちょこちょこと美味しいものを出しているんだよ。
チェーン店でありながらも、住宅地や学生街なんかでは、地元に根付いたレストランとして、美味しいものを食べさせてもらえる店、というのを売りにしたいんだ。
店ごとにメニューも価格もちょっとずつ違って良いし、店長の個性も大事にしたいんだ。
だから直営店しかやらない」

「それと、若い女性客のハートを掴むとね。彼女らは男性も連れてきてくれるんだよね・・・」
と、いつも仰っていました。

さて・・・そんなコンセプトですから、ブランディングをする立場としては、特に現場にいるデザイナーにとっては、18店舗とさらなる新店舗のプロモーションやらメニュー構成など、店ごとに対応していかなくてはなりません。

その至難の技を、私と2名のデザイナー、現場手配の1名との4名で、1998年〜2002年の5年余り、18店舗から34店舗へ関東全域から名古屋まで、15億から40億への拡大路線に巻き込まれていきました。

自分の目で見て感じることを大切に、時代の流れに応じた舵取り

そして、2003年の3月、またしてもM社長に呼ばれます。

「髙橋さん。ターゲット層が変化しているんだ。
15年前に来てくれていた層は、家庭に入って子育てに入る年齢になった。
かと言って、うちの店は男性サラリーマンが男性同士で飲みにくる店じゃない。
出店している店の場所ごとに来店してくれる客層がバラバラで、これからは店のスタイルを、3種類くらいに分けるしかないだろう。
だけど直営店がゆえに人の問題は常につきまとう。
企業としては、毎年売り上げ増を計る必要があるが、今までは新規出店のおかげで、20%増で、その問題もクリアーして来たけれども、これからは、既存店をインテリアも含めてリメイクしていって充実を計るしかないだろう」

確かに、ここ1年〜2年あまりはM社長のコンセプトであった「地元のレストラン」という出店では無く、大型ショッピングモールや百貨店、銀座や新宿などの中心地への目立った出店など、M社長のコンセプトには似合わない街への出店なども多くなって来ていました。

そんな中、私は、M社長が企業として大きな舵取りの決意を再度したことを直感しました。

M社長は、元々は旅行会社の添乗員が社会人経験のスタートとのこと。

その後、老舗のカフェレストランの四谷支店の店長となり、その時代に、老舗の会社の店舗としては最高売り上げを何度も達成した人物として、その当時に一緒に働いていたマネージャーやスタッフを数名引き連れ独立した人物です。

独立時に、大学時代の同級生だった二人に声をかけ、一人は親の会社を引き継いだ現会長とアパレルの企画室にいた現専務との3人での経営陣。

現場はカフェレストランで部下だったスタッフ2人を部長とチーフ・マネージャーという形で受け入れ、盤石のスタッフ体制をしいていました。

M社長は、店舗経営の現場にいなくても、常に経営している店舗に、お客としてフラリと一人でいき、店のサービスや来店客の動向を観察してらしたと聞いていました。

「店のことは現場で体感するのが一番なのよ。評判になった店は他店でも行かなきゃね。
それに、流れや潮の変わり目は、最後は直感で感じるものなんだよ」
と、常々仰っていました。

ゆえに、サービス上でのマンネリも含め、スタッフの教育も現場で、インテリアの汚れや店の看板やエントランスなどの傷みなども気がつけば、早め早めにリニューアルの指示をしていきます。

店の毎月の売り上げの上下をみながら、何が売り上げ増の原因なのか、何が売り上げが下がった原因なのかを見極めていらっしゃったようです。

私への指示も、マネージャーや店長だけに任せきりにせず、告知用のポスターの写真1枚にさえも、直接、何度もやり直しのクレームをいただいたこともありました。

そう。エントランス入り口の1枚のパスタの写真で、客足がどう変わるかまで把握なさっていたのです。

目が届く経営から利益重視の拡大路線への転向

そんなM社長の経営方針に対して、しばらくして不協和音が出始めます。

まずは、大株主である会長からの要求として、利益が少なすぎると。

店舗のリニューアルなどに利益分を注ぎ込んでいきますので、その分の利益は少なくなります。

それと、34店舗もありながらM社長の店舗運営のコンセプトでは、システム的にオペレーションがしにくく、現場を知らない会長の目からは、無駄が多すぎると映っていたのでしょう。

現象としては、2003年の暮れに創業時から一緒だった専務が独立をされたこと。

この独立も、業態やメニュー構成、店舗作りまで、M社長の会社の店舗とソックリな店創りで、M社長のお膳立てでの独立でした。

翌年の2004年の春に、やはり生え抜きの当時350名近い社員の現場の総まとめ役であったチーフ・マネージャーの独立。

このチーフ・マネージャーもM社長の会社の店舗とソックリな店創りで、M社長のお膳立てでの独立でした。

そしてとうとう2004年の下半期にM社長の後釜の社長候補のゼネラルマネージャーの入社があり、創業者であったM社長も2005年3月の決算月に辞職なさいました。

期しくも翌年の2005年度(2006年3月)に、M社長の会社は、創業以来の売上高を達成!

2003年からのM社長の舵取りの成果が出た結果でした。

地元密着型の経営を新たに開始

そして、ご縁が無くなったと思っていたM社長から突然、呼びだしがかかったのが2005年の5月のことでした。

久しぶりにお会いしたM社長は、ここ数年のやや疲れた顔の雰囲気ではなく、晴れやかな表情でした。

古巣のレストランチェーンで、中核のマネージャーであったSさんと一緒でした。

「髙橋さん、新しい店舗を創ることになったんだ。横浜市の地元でね。
ここは、学生も含めた地元の客が見込めるところ。
大きな街じゃないけども息の長い店ができると思うんだ。
Sが一緒に来たから、実際のオペレーションはSに任せるけど、コンセプト創りからブランディングをまたお願いしますね」

「Mさんお得意の地元密着型の店舗ですね?」
とお聞きすると

「利益追求型の経営は、もうコリゴリなのよ。
拡大路線だとあれ以上の店舗展開(34店舗以上の店舗展開)は僕の方針だった直営では限界で、マクドナルドみたいなフランチャイズ形式にしないとね。
仕入れの問題、人の問題、教育も含めて、オペレーションだけの経営になっていくしか無かったのよ。
よく34店舗も直営で広げられたなと思うけど。
まあ・・・Sみたいな優秀なマネージャーが育ってくれたからね。だからやれたことで、僕も一時は・・イケイケどんどんの時はね(コンセプトに)似合わない場所にも出店したりした。
拡大するのが企業の常識だと思っていたし、名誉欲とかあおられたし、数字を積み上げていけばイケると思っていたけど、いつの間にかお店が、株主と銀行のためのものになっちゃって。
従業員やお客様をおいてきぼりにしちゃったことに気が付いたんだよ・・・」

「ある日ね。1号店の店舗でいつものように客として飲んでたら、懐かしい女性客が来てね。
OLだった人が子供連れて、久しぶりにファミリーで利用してくれてたんだ。
それをみてね。店も育ったけどお客も年齢を重ねてるなと。
そりゃそうさ。15年も経ってたんだからね」

「僕の店創りの原点は・・・
やっぱり地元の人が幾つになっても友達を連れて、家族ができれば家族を連れて来てくれるような地元密着の店なんだと再認識したんだよ」

「評判のショッピングモールや、都心の一等地に店を出して、業界の成功者として有名店にすることが、本来の夢じゃないことに気づいたしね。
まぁ、一時はそれが飲食業界での花形だとも思ったけどね。
似合わないでしょう(大笑い)」

「いやいや・・・Mさんは、業界でもかなり注目されてたんじゃないですか?」
とお聞きすると

「まあね・・・そんな時もあったかもね。
でも僕の飲食業(店づくり)は、数字からはじくシステム創りじゃないってことだよ。
代わりに人を作ってきたかな。現場あがりの経営感覚だからね。
今だって人がいなけりゃ厨房だってホールだってやるよ(大笑い)」

となりで聞いていたSさんは、手を振りながら「それは無い」と苦笑いをしていました。

そして「今後の 古巣はどうなりますかね?」とお聞きしたところ

M社長は
「会長の望む通りに、後任者がシステム創りをやれるかどうかでしょうね。
ライバル店はたくさんあるし、古巣を真似た店もたくさん出て来ているしね。
何より、大きくするには、銀行と株主からの影響を小さくする努力をしないと。
言いなりだと血の通った店にはならないからね」

それ以上のことはおっしゃりませんでしたが、それ以降の古巣のイタリアンチェーンの命運を予測なさっていたかのように見受けられました。

経営の舵取りはありのままに観ることができるかにかかっている

M社長のその後は、M社長を慕って集まって来た生え抜きのマネージャーを迎えて、お膝元の横浜市の街に、2008年までの間に、地元密着型の6店舗のイタリアンレストランを開店。

オペレーションと日々の業務は任せながら、資金面と、メニュー構成や大きなリニューアルなどの面のサポートをしながら、実際経営ではなく、各店舗とロイヤリティー契約を結びながらの関わりをなさっていて、2018年には、13期目を向かえました。

一方、古巣のイタリアンチェーンは、2005年度に最高売り上げを達成した後任社長は、1年で辞職。

2010年までの5年間で、3人の社長が入れ替わり、2018年の現在では、都内と関東近県に20店舗の規模で経営をされています。

経営の舵取りは、時代の流れを読むところから始まりますが、その時に起きている現象をなんら虚心も偏見もなく、ありのままに観ることができるかにかかっています。

「正確に」という言葉で世の人は言いますが、正確とは誰かにとっての正確でしかなく、ありのままでは無い可能性もあるわけです。

そして時として、ありのままに観たその現象は、今までのあなたの価値観やコンセプトとは全く違った、もしくは否定するようなこととして映るかもしれません。

でも、その時にあなたの今の当たり前を変えることができるかどうかが、その後の命運を変えていきます。

人は日々の関わりの中で、慢心になったり、誰かからの価値観を植えつけられたりしながら、成長したと思い込んだりもします。

そんな時、あなたの今の判断を、たとえ180度変えることになったとしても勇気を持って変えることです。

唯一の確かさを見極める鍵とは、あなたの状況を、ありのままに観る能力にかかっているのです。

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