ストーリー・ブランディング戦略ー1.ブランドストーリーを創る意味

いきなりの質問ですが、あなたはご自身のブランドストーリーをお持ちでしょうか?

大きく成功していった先駆者の中には、必ずと言っていいほど伝説となるようなストーリーがあります。

コンピューターのアップルが、創業者であるスティーブ・ジョブスの自宅ガレージからスタートしたという伝説は、あまりにも有名です。

そして彼らの発するメッセージは、あなたを次のステージへと引き上げる、そんな感覚を呼び起こさせるものではないでしょうか?

決して製品の有能性やスペックなどを前面に押し出すようなコピーは使わず、iPhone Xと共に過ごす未来のあなたの時間の素晴らしさを想像させて行く。

これこそ実は、ストーリー・ブランディングの真髄でもあるのです。

過去に関わったクライアントの大ヒットからの転落の後の起死回生の一手

私は38年間、企業、製品、店舗、チェーン店、起業家の方の「ブランドを創る」お手伝いをしてきました。

その際に、必ずお聞きするのは

  • 現在の仕事につくまでの過程のお話し
  • 製品開発の時の開発秘話
  • ターニングポイントとなった時のお話と展開

などです。

これって、実にみなさんそれぞれがさまざまなストーリーをお持ちなのですよ。

かなり昔、1991年に、福島にある「おもちゃメーカーの新築する製造工場の、建築と展示イメージとコンセプト」を企画提案するお仕事を請け負ったことがありました。

当時、ご提案した「建築の外観をヨーロッパ風のお城のイメージにするコンセプト」は、最初の建築プランを覆し、他社のプレゼンテーションを退けました。

そんなご縁から、当時ご担当者であった玩具メーカータ◯ラの創業者のご子息から、創業メンバーであった常務取締役に個別に「新築する製造工場の建築と展示イメージとコンセプトの詳細説明」をする機会をいただきました。

詳細説明が終わってフランクなお話の空気になり、ついついいつものクセで、玩具メーカーのロングヒット商品◯カちゃん人形の開発時のご苦労話をお聞きしました。

常務取締役は嬉しそうにお話してくださいました。

「聞いてくださいますか?社長とは創業時からの付き合いです。
僕がまだまだヒヨッコの時からですが、当社はビニール工場が前身で、町工場で最初は日用品を作っていたんです。

最初にヒットしたのが「だっこちゃん人形」で、当時は空前の大ヒットを飛ばしたんですよ。
1960年のことでしたが、社会現象にもなりました。
春が過ぎた頃から一気に注文数が増え、夏には雑誌、新聞、海外TVにも出、ニュースにも取り上げられたりで、海外でもブームしましたからね。
デザインは、当時アルバイトにきてた武蔵美の学生がやってくれて、彼も今では随分有名になって、大学教授になっているんじゃないかな。

工場を昼夜終夜で回して、作っても作っても間に合わず、作った端から出荷していました。
ヤクザに現金で買い付けに来られた時には冷や汗が出ました。怖かったですよ。
その時の社長の対応は立派なものでした。
ヤクザ相手には頑として売らないを貫き通しましたからね。
最後は警察に警備していただくことにもなりました。
あの時から一気に会社は勢いに乗りましたね。(半年で日本国内の販売個数は240万個)

でも、ブームは国内では半年、海外を入れても1年ほどで、入ってきた資金で設備投資をした途端に今度は在庫の山ですよ。
社長と一緒に頭を抱えました(笑)
そりゃあね、このまま売れ続けると思いこんでいましたから。
キャラクターものの勢いと怖さを身にしみて感じたものです。
いわゆるキワモノという部類のものですがね。
でも、その経験で長く売れる商品を持たなくては、と考え方を変えたんです。
それまでは一発当ててやろう的な、考えしか社長にも僕にもなかったですからね(笑)

そして次が◯カちゃん人形です。
当時、他社の下請け的なこともやっていたので、幼少の女の子向けの人形のドールハウスの企画をやってたんです。
でも、どうも寸法が大きくてアメリカサイズなんですよ。
日本の住宅事情と言いますか、こんな大きなものは日本人で買える家庭はお屋敷に住むような方々だけ。
それで、日本の団地をサイズと言いますか、持ち運びもできるようにハンドバック型にして、幼少の女の子向けのお人形の開発も一緒にスタートしたんです。
その当時、バー◯ー人形がアメリカから入ってきた後でしたが、日本人の子供向けではないなと感じていましたのでね。
人形の容姿、大きさも含め、日本の幼少の女の子が好むように、そして持てる大きさに、サイズを小さくもしたりしました。
それと、6才くらいまでの女の子のおもちゃごっこには、必ずお友達が出てくるじゃないですか。
それで、お友達のキャクター人形を作ったりとね。
人形の体型も日本人女性の体型にし、顔の表情も少女雑誌を随分参考にさせていただきましたね」

ロングヒットを支えたのはキャラクター設定と物語

一緒に行ったパートナーが
「◯カちゃんは、数年ごとにモデルチェンジをなさっていますが、その時その時で、どなたかモデルになるような方を決めていらっしゃるのですが?」
と聞いたところ

「はい。日本人もね1967年の発売当時と比べると体型も随分変わってきていますので、時代時代に合わせて、数年ごとに変えています。
最近チェンジしたのは、ある女性タレントの方を参考にボデイバランスですとか、お顔の形ですとかメイクとかファッションも含め参考にさせていただいています。

まあ、◯カちゃんは僕たちにとっては特別なんです。
最初の「だっこちゃん人形」の後、会社は財政的にも資金繰りも大変でして、もうこの◯カちゃんにかけるしかなかったんですね。
起死回生の一手だったんです。社員も、社員の家族もいますから。
だからヒットさせるため、日本のマーケットに受け入れてもらうためのありとあらゆる知恵を出しました。
6才までの女の子をターゲットにしてますから、読んでいる雑誌も含め、その子たちの遊び方を観察したり、時には入れてもらったりしてね。「おもちゃごっこ」ですけど(笑)
会話に出てくる、お友達とか、パパ、ママも含め、お姉さん、妹、ボーイフレンドとかも作り、年齢、通っている学校などもね。
今で言うキャラクター設定ですが、発売後も随分と◯カちゃんの物語を作ってきました。

日本ではそれまで人形といえば、飾っておくもと言う慣習が強かったんですよ。
コケシですとか日本人形、飾り物のお人形などもそうですよね。
だから、幼女のリアルなお友達として一緒に遊んでもらえる、おもちゃごっこをしてもらえる。
そんな◯カちゃんにしたかったんです」

ブランドストーリーを作る意味とは

私の幼少期は、人形といえば、バー◯ー人形が日本で発売された最初頃の世代だったため、◯カちゃんが発売された時にはすでにお人形遊びをしない年齢になっていました。

ですが、TVCMや少女雑誌で、◯カちゃんの家族やお友達が素敵なハウスで暮らしているだろうことは少女ながらに想像でき、一種の憧れを持って眺めていたのを思い出しました。

そして、常務取締役のお話を聴きながら、一つの物語(ストーリー)は、幼女の心にも確実にヒットしていく要素を作り、少女玩具のトップメーカーにまで企業を押し上げる力がある(2003年には5000万体の販売実績)のだと、ブランディングの真髄が聞けたことに感動したことを覚えています。

ブランドとは、物語(ストーリー)を「語れること」で人々に「語っていただけること」となり、それは物語の中にある価値観や考え方に共鳴した結果の行動なのです。

物語の根底には、常に何らかの人間的な価値(愛なり勇気なり、自由の大切さなり)があり、それがブランドの価値観や理念、主義と重なっていれば、物語はごくスムーズにそれを伝えることができます。

商品の持つメリットや独自性をただ説明するだけでは足りないものを、物語(ストーリー)であれば人々が心情的につながりを感じてくれるからなのです

そして、あなたというブランドにも「ストーリー」は必ずあるはずなのです。

特別な物語しかストーリーにならないと思いがちですが、あなたにしか語れない価値観、考え方を作ってきた環境や時間が物語なのです。

一つだけアドバイスをするとしたら、あなたのストーリーに沿ったブランドとしての理念とミッションがあなたの物語の中で語られていることこそ、ブランドとしての価値を発揮していきます。

ブランドストーリーを作る意味は、ストーリーがブランドに息を吹き込み、ブランドの深みを増し、ブランディングに火をつけるエンジンだからなのです。

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