ブランドを色々な角度から見てみたら

先日、あることがきっかけで、玄関から門までの工事を勧められました。

紹介して頂いた業者さんが「パナソニック」を名乗ってきたのには少し驚きました。
どうやらこのようなビッグブランドの様々な事業分野への参入は、いろいろなところで起こっているようです。

そういえば何年振りかに会った従妹の旦那が、新潟の建築会社の社長になっていたという話を聞き、「へえ、大変だね」とちょっと話を振ったところ、怒涛のような愚痴が飛び出してきました。

愚痴の骨子というのは、いかに建築業界が今資金的に厳しい状況に置かれているか、ということと、彼の会社としての解決策として採用した方法は、トヨタからの資本参加だったというのです。

バブルの崩壊後、ほとんど経済成長していない日本において何が起こったのか?というと、「勝ち組企業の他業種進出」という現実ですね。

買収、資本参加、金融支援など、ありとあらゆる形で強者が弱者を丸呑みするかのごとくです。

携帯電話事業にもトヨタは参入していますし、もともと出版事業を行っていたソフトバンクがvodafoneを買収して、あっさり事業名称を「Softbank」に変更し、元の事業よりも遥かに大きな事業会社としてブランドを確立していきました。

興味があれば、どのビッグブランドが過去にどんな新しい事業エリアに食い込んでいったのかを調べてみてください。結構びっくりされると思います。

ビジネスは金融業を目指す?

長年ビジネスを俯瞰してきましたが、ある面白い法則があることに気が付きました。

それは「どんなビジネスも成功の階段を昇って行くと必ず金融関連業に参入しようとする」ということです。

銀行、保険、証券など金融にもいろいろな業種がありますが、銀行業だけを取り上げても、セブンイレブン、ソニー、楽天などなど、メガバンクが淘汰、統合されて以降、流通系、メーカー系、メガバンクがネット利用者向けに開設した銀行などここ数年、雨後の筍のように新しい銀行が登場しています。

ゼロ金利時代を迎え、金融業を営むメリットは以前ほどなくなったように見えますが、それでも金融業に参入したい一般事業会社はこの先も後を絶たないだろうと予想してます。

ビジネスはブランドで決まる、と言えるかも知れない

「名は体を表す」という言葉のとおり、ビジネスはブランドとは切っても切り離せない関係があります。

これまでお話したビッグブランドであろうが、街中の小さな商店であろうが、この本質は変わりありません。

こういう話は、リアリティの範囲を大きく越えてしまうものになってしまうかもしれません。

ですから「ふ~ん」という感じで受け流して読んで頂ければよいのですが、こういった大手のブランドにも幅の利かせ方によって、このような異業種にも一見無関係と思われるような冠の被せ方が通用してしまう、ということを知って頂く事で、「ブランドは軽微な事柄ではないんだなあ」という認識を持っていただければ幸いです。

ビッグブランドであるパナソニックもトヨタも、これまでに本来の事業エリアである、家電、車のビジネスから事業範囲を拡張してきた経緯があることは、多くの方がご存知だと思います。

どちらも住宅産業に進出しており、それぞれ「パナホーム」、「トヨタホーム」という衛星ブランドを構築して進出したわけですが、そういう事業拡張期におけるブランド名の決定プロセスにおいては、かなり喧々囂々があったと想像するのには難くありません。

ですから、あなたのブランディングでは、とことんこだわり抜くことをお勧めします。名前一つ、デザイン一つで、あなたのビジネスが持つ生命力に格段の違いが生まれるからです。

個別の事例で考えるのがブランディング

ブランド、ブランディングはネット上で様々な議論が展開されています。

そもそもブランドとは?という定義論から始めているところも数多くありますが、個人的にはブランドを一般論として論じることにはあまり価値を感じていません。

マーケティングという概念も似たようなもので、結局こうした曖昧模糊とした概念を一般論化することにどれだけの意味があるのだろうか?ということです。

ブランド=ネーミングと捕らえても、それは全くの間違いではありませんし、ブランド=シンボルマークと唱える人を非難しても無意味です。

なぜかといえば、それはすべて個別の事例に依存しているからです。

CIの事例集をお読みになればお分かりいただけると思いますが、社名の変更からの事例、社名を残してコンセプトを再構築した事例、エンブレムをアイテムとして追加し、求心力を新たに創造した事例など、一つとして同じ手法で成功させた事例はありません。

人間の学者的本能から、こうした事例研究によって定理化しようとする欲求はなかなか避けられませんが、おそらくそんなことは未来永劫無駄な努力に終わるだろうという確信があります。

「事件は現場で起きているんだ!」という織田祐二の名ゼリフではありませんが、ブランド、マーケティングと同じようにデザインも一般論で片付けるには難しい概念です。

ブランドはメンテナンスが大切です

さて、新しく「これが私のブランドです」というものを手に入れたあと、あなたはあなたのブランドをどのように取り扱いますか?

ある程度の期間は、それなりの広報、情報拡散を行うとは思いますが、どのくらいの期間こうした活動を継続すべきなのでしょうか。

以前の記事で、記憶について書きましたが、ご自分のブランドというものを完成した瞬間から、「人の記憶に残す」ことを継続・実行しなくてはなりません。

ブランドを完成させるまでのプロセスは、すべてこの「他人の記憶に残す」ためのブレーンストーミングの山であるといっても過言ではないのです。

そして山のような議論の結論を実行に移し、継続することが大切です。

情報発信のフォーマット、シンボルに対する意味論、シンボルに結びつけた企業としてのミッション、行動原則、規範等、こうしたコンセプトを維持し続けることが当たり前ですが必要不可欠です。

一般論では決して扱わないのが、ここの作品としてのネーミングやマークの完成度です。

デザイナーであれば、それはそれはシビアなダメ出しを何度も受ける、精神的にもきわめてタフな状況に直面しなくてはなりません。

特にCIなどシンボルの制作では、プリミティブな形状(つまり丸や三角、四角など図形としての基本形)のアレンジ的な傾向が強いため、商標登録なども意識しながら、というレベルになれば、それはそれは大変な気使いも要求されるのです。

こうした努力の結果、様々なメディア、制服などのファッション、ステーショナリー、文書などあらゆるコミュニケーション媒体に展開され、ブランディングとしての取り組みを社内のみならず、社外への情報発信としても展開されるわけですが、こうした活動の最大の敵は、忘れ去られること、そして飽きられることです。

なぜ、人は7年で飽きるのか?

この飽きられるということについて、心理学的、大衆心理学的観点から面白いことを述べている方がいます。

著者は、マーケティングで語られる「トレンド」を「大衆の意識がそろって向かう方向性」と定義し、なぜトレンドに波があるのか、をトレンドの前にあるもの、つまり人間の脳に着目しています。

そこから「飽きの7年周期説」を導き出しているのですが、過去の時代のトレンドを引っ張り出してみると、確かになるほど、と思わせるものがあります。

以前の投稿で、「創造」という方面での記憶の活用はあまり意味をなさない、ということを申し上げましたが、マクロ的視点からの「トレンド」には傾向があり、次のトレンドというものを予測することは可能であると述べています。

デザイナーの立場からも、結構目から鱗の内容がたくさんなのですが、ネーミングにおける1999年のイタリア語ブームが発生した時の背景分析は、特に読んでみてほしい内容です。

これからセルフブランドを構築してみようと思っている方には、かなり参考になる書籍だと思います。

ブランディングにおいては、一時のトレンドに流されるようなものを構築することには、あまり賛成できませんが、デザインされたコンセプトやビジュアルに対する意味の与え方は、時代によって微妙なコントロールを与えることで、トレンドを克服することも可能になります。

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